東京高等裁判所 昭和41年(行コ)43号 判決 1968年5月09日
控訴人 郵政大臣
訴訟代理人 藤堂裕 外三名
被控訴人 山木紀義
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 <省略>
理由
一、当裁判所の判断は、つぎのとおり付加訂正するほか原判決と同一理由により被控訴人の本訴請求は理由があると認めるので原判決の理由をすべて引用する。仮りに控訴人主張のような理由で組休を不許可としたとしても右認定の如き事実関係においては右認定を妨げるものではない。
右認定に反する<証拠省略>に徴し採用しない。<証拠省略>も前示認定を妨げる程のものではない。
二、原判決十三枚目裏三行目「三〇」とあるを「八」と訂正し、同六行目「二三日」から同七行目「二九日」まで、および、同七行目「右欠勤日」から同九行目「受けていること」、同一行目「したがつて」以下十四枚目表二行目「明らかである。」までを夫々削除する。
三、被控訴人は、控訴人の当審における「処分理由の訂正」は、許されないと主張するもので、この点を判断する。
控訴人の訂正なるものは、原審における主張とを比較すると、組休付与願を不許可にした理由を、原審においては「当時被控訴人の所属していた保険課では非常勤職員を使用していたほどで被控訴人の申し出た長期の休暇を認める程の余裕がなかつたので業務に支障があるため不許可とし」たものであり、当審における主張は、「上局からの指示もあつて、当時仙台郵政局管内の電通合理化対象局において、全逓宮域地区本部および各支部からオルグが参加し、各局長に対して組合側が提案するいわゆる電通合理化に関する確認書への押印を獲得するために強力な交渉を含む違法斗争を実施しようとしている状況ならびに被控訴人が右オルグの一員であることを知り、被控訴人が交渉の相手となる局長に不当な圧迫を加える事態を未然に防止するため右組休を不許可にし」たというのである。そして処分事由としてはいずれも、「勤務を命じたのにこれを無視して勤務を欠き職務を怠つたというのである。なるほど違法斗争に参加して勤務を欠くのと、勤務を欠いて業務に支障を生じさせたと言うのでは、情状として異るものがあるといえるかも知れないが、処分事由は、訴訟において、それが明示され、現実にこれに該当する事実が存在すれば足りるのであるから、処分事由の同一性の認められる範囲においてはこれが変更も許されるべきであり、前示事実関係の下においては、処分事由の同一性にかわりはないと認めるべきである。したがつて情状の点から相違があるということで変更を認めないわけにはいかない。
四、被控訴人は、控訴人の前示訂正は時機におくれた攻撃防禦方法であるから却下を求めると主張するのでこの点を判断する。
本件訴訟にあける原審以来の双方の主張、証拠調べの結果、ならびに当審における訴訟の進行程度からみて、控訴人の組休不許可の理由の変更はあながち時機におくれたものとは認められない。被控訴人は、控訴人の主張の訂正は、処分事由の一部の変更ないしは処分事由の一部と密接不可分の関係にあり、かつ、重大で基本的な事実の変更を意味するから、これに対して被控訴人のもつ利害は重大であると主張するが、控訴人の主張訂正部分については、原審においてもある程度審理され前示のとおり理由中にもこの点にふれているのであるから、被控訴人の右主張は当らない。また、被控訴人は右の如き重要事項の審理について第一審の利益を失うというが、これまた右と同一理由によりこの主張は採用できない。
よつて、その余の判断をまつまでもなく、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、控訴費用の負担について行政事件訴訟法第七条附則第三条、民事訴訟法第九五条八九条の規定を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 長谷部茂吉 鈴木信次郎 岡田辰雄)
別紙添付図面<省略>